月経カップが上がったり下がったりしてしまうのは骨盤底筋が原因かも

普段、私たちが快適に過ごすために腟がどんな動きをしているか意識することはあまりないですよね。でも実は、腟のまわりには、私たちの日常生活を支えてくれている大事な筋肉があります。それが骨盤底筋です。

骨盤底筋は骨盤の底に位置し、子宮、膀胱、直腸を支えている筋肉で、運動時に骨盤を安定させたり、排泄をコントロールしたりという重要な機能を果たしています。月経カップが腟の中で正しい位置にとどまってくれるのも、骨盤底筋のおかげなのです。

年齢を重ねると筋肉は変化していくものですが、見た目にはっきりわかるおなかや腕まわりの筋肉と違い、骨盤底筋は体の内側にあるため外見の変化には現れにくいという特徴があります。そのため、自分の骨盤底筋がどんな状態にあるのかを知らずに過ごしている人も珍しくありません。

月経カップを使うときにはじめて骨盤底筋を意識したという人は多いです。特に骨盤底筋が弱っている人は、月経カップを使うことで自分の骨盤底筋の状態に課題があることに気がつきます。

この記事では、月経カップデビューした人が経験しやすい不具合で、骨盤底筋の状態に関係が深い5つのケースをご紹介します。骨盤底筋の状態によっては、月経カップの装着中に、カップが挿入した位置よりも上に行ってしまったり、下に行ってしまったりすることがあるのです。もし似たような経験があれば、この記事で一緒に原因と改善点を探っていきましょう。

ケース1:エクササイズが趣味の10代です。うまく挿入できないのはサイズが大きすぎるから?

「 19歳、趣味はジョギングとヨガです。最近月経カップを購入しました。10代なのでスモールサイズのカップを買いましたが、うまく挿入できません。挿入のコツを調べていたら「カップを回しながら入れるといい」というアドバイスがありましたが、入れることすら難しいので、回転させるのはさらにハードルが高いです。スモールサイズのカップですら、私には大きすぎたのでしょうか? 」

カップが挿入できない理由にはいくつかありますが、そのひとつとして、骨盤底筋が常に緊張した状態になっていることが考えられます。骨盤底筋は硬く引き締まっていればよいというものではありません。「締まる」「リラックスする」ことを交互に繰り返すことができる状態が骨盤底筋の望ましい状態です。挿入するときと取り出すときは、骨盤底筋をリラックスさせ緩めた状態で行います。この方の場合は、骨盤底筋をリラックスさせた状態で挿入してみることをおすすめしたいです。ゆったりした気持ちでカップに向き合ってみましょう。

骨盤底筋の緊張状態の原因としては、過度のトレーニング、慢性的な腰痛、生理痛などが一例として挙げられます。常に骨盤底筋が緊張している方は、月経カップやタンポンのような挿入型の生理用品を使うときやセックスするときに痛みを感じることがあります。

ケース2:産後に月経カップを再び使いはじめたら、カップが下がってきてしまいます

「 33歳です。妊娠する前に6年間月経カップを使用していました。産後1年半で生理が戻ってきたので、これまで使っていた月経カップ(ラージサイズ)を再び使い始めました。以前は快適に使えていたのですが、最近は装着しているとだんだんカップが下がってきてしまいます。」

この方のケースは、妊娠・出産を経て骨盤底筋の弾力が失われ、カップが定位置に固定できなくなった可能性が考えられます。以前は問題なく使えていたカップが、産後再び使ってみたとき、装着中にカップが下がってきてしまうことはよくあることです。

経産婦におすすめなのはサイズの大きい月経カップですが、すでにラージサイズのカップを使っている方がさらに大きな直径のカップを使うと、下腹部の圧迫感など別の不具合が生じることもあるので、カップの大きさは今のままでよさそうです。

エクササイズや骨盤底筋トレーニングで骨盤底筋のコンディションを整えることで、状況が改善することが考えられます。骨盤底筋を締めるのは、おしっこの途中で止めるような筋肉の動きです。数秒間キープしたあと我慢したおしっこを出すように筋肉を緩めます。この動きを繰り返して練習します。このような骨盤底筋のトレーニングは、座った状態でも立った状態でもいつでもどこでもできます。
骨盤底筋のトレーニングは、こちらの記事もご覧ください。

骨盤底筋のトレーニングのほかにできることとしては、ステムをカットすることです。下がってくるカップのステムが腟口にあたって気になる場合には、ステムを好きな長さにカットして使うこともできます。月経カップはステムがなくても問題なく使うことができますが、カップのステムは一度カットしたらもとには戻せないため、慎重に行いましょう。本体を一緒に切って穴を開けてしまうことのないよう、ステムは数ミリ残しておきます。

ステムをカットした状態でうまく使えるかどうかを試してみたい方のために、裏技があります。カップの裏表をひっくり返して使用することです。こうすると、ステムが内側になり、外側はツルンとした形状になるので、ステムがない状態のカップの使い勝手を試すことができます。実際にステムをカットする前に、カップをひっくり返した状態で何回か使ってみて、使いやすかったら切ってみるとよいでしょう。

月経カップが下がってくる

ケース3:いつの間にかカップが上に行ってしまい、取り出しのときに焦ります

「 出産経験なしの38歳、ラージサイズのカップを使用しています。カップの挿入は簡単ですが、数時間後にカップを取り出そうとすると、入れた位置よりもかなり上に移動してしまっているようです。取り外しが難しく毎回焦るのですが、カップの大きさが自分に合っていないのでしょうか?」

簡単にいうと、腟のまわりの骨盤底筋がリラックスするとカップの位置は下がり、骨盤底筋が緊張状態にあるとカップの位置は上がります。この方の場合、カップが上に移動しているということは、おそらく骨盤底筋がかなり締まった状態にあることが考えられます。

しかし、カップが多少上に行ってしまうこと自体に大きな問題はありません。痛みや不快感がないのであれば、そのまま使い続けて大丈夫です。腟のすぐ上にはかたく閉じられた子宮口という行き止まりがあるため、カップはその先には進めません。取り外しが難しいように思っても、実際にはほんの数センチ先にあるだけです。

重要なことは、取り出したいときにカップが取り出せることです。上に行ってしまったカップを取り出すコツは、下腹部に力を入れながら骨盤底筋をリラックスさせることです。取り出すときに緊張したり焦ったりすると、腟のまわりの骨盤底筋がかたくなって取り出しにくくなってしまうので、時間のあるときにゆったりした気分でカップを取り出すとよいでしょう。

今の状態で小さいサイズ(短い直径)のカップを試してみた場合、今よりもさらにカップが上に移動するようになってしまうかもしれませんので、おすすめしません。

ケース4:寝ている間だけカップが下がってきてしまいます

「 26歳の看護師です。出産経験はありません。スモールサイズのカップを愛用中です。日中は漏れを心配することなく仕事ができるのですが、寝ている間に、カップが下にズレて、漏れ始めるようです。睡眠中は大きいサイズのカップを使ったほうがよいのでしょうか?」

体の他の部分の筋肉と同じように、骨盤底筋は休んでいるときにリラックスします。寝ているときは起きているときのようには体を支える必要がないので、骨盤底筋はそれほど強く働きません。そのため、カップが就寝中に腟の中で下がってしまうことはあり得ることです。就寝中のカップのズレや漏れに関しては、横向きになって膝の間に枕やクッションを挟んで寝ると、カップも安定しやすく漏れを防ぐ効果が期待できます。

骨盤底筋の状態以外に考えられる漏れの原因としては、就寝中に経血が多く出ていることも考えられます。この場合、夜間用に大きめのカップを試すことで改善することは考えられます。しかし、日中は今のサイズのカップで快適に過ごせているのでしたら、今のカップを使い続けてもいいと思います。寝る直前にカップをリセットして、なるべく就寝中の経血を溜められるようにしたり、夜だけ吸収ショーツエヴァウェア」を履いて寝たりすることも試してみてはいかがでしょうか。

吸水ショーツ エヴァウェア

ケース5:ウェイトリフティング中にカップが下がってきて漏れました

「 月経カップを愛用しています。ジムに行くのが大好きで、筋トレ中も使っています。ある日、ジムでのウェイトリフティングで、重いウェイトを使った筋トレをしていたとき、いきなり漏れてしまったことがあります。普段は使っていて漏れたことがないのになぜでしょうか?」

思いウェイトでウェイトリフティングをすると腹圧が上がり、骨盤底筋に下向きの圧力がかかります。腹圧が一気にかかると、腟のなかでカップの密閉が解除されカップが下にズレることで、カップ内の経血が漏れることがあるのです。ウェイトリフティングもそうですが、重い荷物を持ち上げるときなどにも注意が必要です。

また、特に便秘気味の方では、排便も同様に腹圧がかかる動作です。排便中にカップが出てきてしまう場合、カップを腟のなかに保ちながら便だけ出すということは難しいので、カップはあらかじめ取り出しておきましょう。

スポーツジムでウェイトリフティングのトレーニングをする女性

まとめ

以上の5つの事例から、骨盤底筋の状態と月経カップの関係が深さがおわかりいただけたでしょうか。カップが定位置に保たれない場合には、カップの大きさや自分のテクニックの問題ではなく、骨盤底筋のコンディションも原因として考えられるかもしれません。

骨盤底筋の状況は変わります。今、適切な位置にカップが保たれなかったとしても、筋肉のコンディションの向上や骨盤底筋の状況に合わせたカップの使い方のコツをつかむことで、快適に使えるようになることがあります。筆者も産後、月経カップを使い始めたときは骨盤底筋が緩んでいて、カップの下3分の1程度が出てきてしまっていました。しかし、骨盤底筋を意識し頻繁に骨盤底筋トレーニングをするようになった結果、今では小さめのサイズのカップも定位置で使えるようになりました。

ぜひ長い目で見て、月経カップ、そして自分の骨盤底筋と付き合っていただけたらと思います。

 

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